僕達の願い 第33話


むっすりと、その年齢にふさわしい表情で少年は不貞腐れていた。
人間らしい表情をするようになったと思う反面、何でこの男の相手を私がしなければいけないのだと、新緑の髪の少女もまた不愉快そうな顔をしている。一時的にゼロレクイエムで共闘したとはいえ、それ以外では常に敵であった相手だ。
彼女がいなければ。
こいつがいなければ。
互いにそう思っているのだから、本来ならこうして二人きりでのんびりお茶を、なんてあり得ない事だ。
だが、スザクは咲世子の出したサンドイッチとオレンジジュースを飲んでいるし、C.C.は咲世子の焼いたピザを食べている為、互いにここから離れられなかった。

「少しは仲良くされたらどうですか」

咲世子はそう言いながら、こうして二人の食事をこの場に用意した。
二人共咲世子の事は無碍には扱えないため、渋々ながら大人しく従っていた。
とはいえ、ふくれっ面をさらしている、体は子供で中身は大人な裏切り属性二重人格騎士・・・今は人格崩壊も加わるが、そんな奴の相手などいつまでもする気はない。
こっそりこちらを伺う咲世子を満足させるためにも、さっさと会話とやらを終わらせようとC.C.は口を開いた。
この男が不機嫌な理由など、話を聞かなくても解っているのだから。

「いい加減妥協したらどうだ?リハビリは順調で腕はある程度自由に動くし、目も見える。そうなれば自分の意思で動こうとするのは当たり前だろう。アレは元々人の世話はするが、世話をされ慣れていない。自分の事は全部自分でするのが当たり前と考えているんだからな」

お前もその方が楽だろう?
そう告げると、スザクは悲しげに眉を寄せた。

「それはわかってるよ、解ってるけど」

再会してから今まで、1から10までルルーシュの世話をしていた。食事にせよ着替えにせよ、生きる上で必要な事はすべてだ。寝返りさえ打てない彼が床ずれを起こさないようにと、夜中に起きて体の向きを変えたりもした。眠るベッドも一緒だった。
だが、視力と両腕の自由を取り戻した彼は、一人で全てをこなしてしまい、歩けないハンデがあるはずなのに、それさえも感じさせなくなってしまった。
こうなるとスザクは面白くない。
いまだ腕力も握力も弱い・・・いや、これは昔からかもしれないが、何せ力はないため、何をするにも時間はかかるが、自分一人の手でやってしまう。・・・障害を持つ身だというのに、手がかからなすぎなのだ。
今日は特にそうで、昼食を終えた頃、今日から一人で入浴すると言い出したルルーシュは、1時間ほどかかったが本当に一人で入浴してしまった。だが、体力を使いきったらしく今は最愛のナナリーと一緒にお昼寝中。
護衛であるジェレミアがついている為、たまには一人でのんびりするよう言われ、部屋から追い出された。
そして今に至る。

「そのうちKMFにも乗るとか言い出しそうだよ・・・大人しくしていてくれないかな・・・」

ぷう、と不貞腐れながら、スザクはグラスに口をつけた。氷がカランと音を立て、氷が解けた分だけ薄まったジュースが口の中に流れてくる。
・・・美味しくない。

「お前の場合、大人しくではなく、自分に頼ってくれないか、守らせてくれないか、だろう?それと、残念なお知らせだ。ガウェインの製作は決定済みだ」
「ええ!?」

スザクは跳ねるように顔をあげ、C.C.を見た。

「元々ガウェインは副座式で、後部座席のルルーシュには足を使う操作は無かったからな。以前と同じく私が操縦するから問題はないという判断だ」

それに、あの男が安全な場所で黙って指揮する性格ではない。

「だけど、危険すぎる!」

元々KMFは操縦者に負荷のかかる乗り物だ。10歳の、それも体に障害を抱えた者が乗るなんて無茶だと、スザクは声を荒げた。

「用意しなければ、その辺の汎用機でこっそり出撃するのがルルーシュだ。あいつの汎用機での撃墜回数知ってるか?ああ、大半はお前が落としたのか。あいつが乗る以上大将機なのだから、いつもエースパイロットが狙ってくるだろう?ならば蜃気楼並みの絶対守護領域を展開できるガウェインを用意し、私が操縦する方が安全だという結論が出た」

蜃気楼を用意しろとルルーシュは言ったが、それは却下させたんだぞ。
ガウェインはジェレミアを封じるためC.C.が海底深くに沈めはしたが、唯一撃墜されなかった機体だった。
だからこそ、許可が出たのだ。

「なら僕が操縦する!」
「ランスロットはどうする。大体蜃気楼ではお前の思う通りの動きは出来ない。あれはあくまでも指揮官機だからな。前と同じく私とルルーシュが乗る。これも決定事項だ」

彼が決定したなら覆すのは難しい。
それを何より・・・あのゼロレクイエムで痛感しているスザクは、大きなため息を吐いた後、不貞腐れた顔で残ったジュースを氷ごと一気に飲み干した。
それを合図にC.C.も最後の一口を平らげると、話しは終わりだなと、空いた皿を持ち立ち上がった。
その時、ばたばたと大きな足音を立て、この場に一人の男が駆けこんできた。
それは慌てた顔で、ぜえぜえと肩で息をした玉城だった。

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